PCというものは、壊れるならもう少し分かりやすく壊れてほしい。
電源ボタンを押しても何も起こらないとか、画面が真っ青になってこちらを絶望させるような再起動をするとか、そのくらい堂々と壊れてくれればこちらも覚悟が決まる。ところが今回俺を一週間近く悩ませた症状は、PCそのものは至って健康そうな顔をしているくせに、Endfieldを起動した時だけ突然死ぬという非常に陰湿なものだった。
原神は動く。スタレも動く。NTEも動く。ベンチマークを回せばCPUもGPUも「私は健康です」と診断書を持って帰ってくる。
それなのにEndfieldだけが、しばらく遊んでいると何の前触れもなくデスクトップへ帰っていく。帰省の頻度が高すぎる。
Windowsには、PC内部で起きたエラーや異常の記録を見るための「イベントビューアー」という機能がある。言ってしまえば、PCが残している事件現場の調書みたいなものである。
そこを覗いてみると、Endfieldがクラッシュした際には「UnityPlayer.dll」、例外コード「0xc0000005」という記録が残っていた。
※UnityPlayer.dllというのは、Endfieldでも使われているゲームエンジン「Unity」の動作に関わるファイルのひとつで、0xc0000005は、プログラムが本来触るべきではないメモリ領域に触れようとした時などに出る「アクセス違反」と呼ばれるエラーである。PCゲーマーであれば、なんらかのエラーでポップアップ画面を見る機会の1つや2つはあるだろう。あれだ。
ここまで書くと何となく原因が分かったような雰囲気が出るが、全然分からない。
0xc0000005について調べると、メモリ、CPU、ドライバ、Windows、その他諸々と、ほぼPCを構成する全てのものが容疑者として出てくる。全員が疑わしい、マダミスみたいなものである。
結論から先に書くと、俺の環境ではBIOSをアップデートして以降、Endfieldのクラッシュは発生しなくなった。
BIOSというのは、Windowsが起動するよりさらに前の段階で、CPUやメモリなどPCの基本的な動きを管理している仕組みだと思ってもらえばいい。
ただし、「Endfieldが落ちる人はBIOSを更新しましょう」という記事ではない。BIOSが直接的な原因だったのかは今でも分からないし、そこまで断定できる材料もない。俺に分かるのは、一週間かけてWindows、メモリ、CPU、GPU、ドライバ、ゲーム本体と順番に疑った末にBIOSへ辿り着き、その後は少なくとも同じクラッシュが起きなくなった、ということだけである。
先に、今回のPC環境と、何を試してどうなったのかだけ簡単にまとめておく。
| 区分 | 項目 | 内容 / 結果 |
|---|---|---|
| 環境 | CPU | Intel Core i9-14900KF |
| 環境 | GPU | GeForce RTX 4090 |
| 環境 | メモリ | 32GB |
| 環境 | OS | Windows 11 |
| 検証 | ゲーム再インストール・各種設定変更 | 改善せず |
| 検証 | Windows修復 | 改善せず |
| 検証 | Windowsメモリ診断 / MemTest86 | 明確な異常なし |
| 検証 | CPU設定変更・負荷テスト | 改善せず / 明確な異常なし |
| 検証 | GPUドライバ変更・VRAMテスト | 改善せず / 明確な異常なし |
| 検証 | BIOS設定変更 | 一時的に改善 |
| 検証 | BIOSアップデート | 以降、同じクラッシュは発生せず |
今回はその一週間を、俺の精神がまだ健康だった頃から順番に振り返っていこうと思う。
とりあえずEndfieldを疑う
まず俺の環境は、CPUがIntel Core i9-14900KF、GPUがGeForce RTX 4090、メモリ32GB、OSがWindows 11である。Endfieldを動かすこと自体に困るような性能ではない。むしろこれでスペック不足と言われたら、世の中の大半のPCは起動ボタンを押した瞬間に謝罪文を出さなければならなくなる。
当然、最初に疑ったのはEndfieldだった。
ゲームファイルのチェック、再インストール、DirectX 12から11への変更、NVIDIAやDiscordのオーバーレイ停止、DLSSやFrame Generation周りの変更、Windows Defenderの除外設定。インストール先も疑い、Dドライブに入れていたものをCドライブへ移した。exeを直接起動し、管理者権限でも動かした。
このあたりは全部、「ゲームそのものや、ゲームとWindowsの相性がおかしいだけでは?」という比較的分かりやすい疑いを潰していた段階である。
ここまでやって直れば、「ゲームかインストール環境の問題でした」で終わる。俺もそうなることを期待していた。
普通に落ちた。
しかもかなり律儀に、UnityPlayer.dllと0xc0000005を残して落ちる。
このあたりから、病院で「風邪ですね」と言われて薬を飲んだのに三日後も40度ある患者みたいな気分になってくる。Endfield側だけを見ても埒が明かないので、次はWindowsを疑うことにした。
Windowsを疑う
ログを調べていると、Windows側にも妙な記録が出ていた。OSのどこかが壊れていて、Endfieldだけがたまたまその壊れた床板を踏み抜いているのではないか。
そこでDISMやSFCを使ってWindowsの修復を始めた。
※DISMとSFCは、どちらもWindowsに最初から用意されている修復機能である。ざっくり言えば、Windowsを構成しているファイルが壊れていないか調べ、問題があれば直してくれる。
ところが、今度はWindowsを修復するためのWindows修復機能が素直に終わらない。
こうなるとかなり嫌である。壊れた自動販売機を直そうとして修理ボタンを押したら、その修理ボタンまで壊れているようなものだ。
最終的にはWindows 11のISO、つまりWindowsをインストールするための元データまで用意し、それを修復元として使うことでDISMもSFCも正常に完走するところまで持っていった。
コンポーネントストアにも問題なし、システムファイルにも整合性違反なし。
難しい言葉が出ているが、要するにこの時点ではWindows自身が「俺はもう壊れてない」と言っている状態である。
よし。これでWindows側はさすがに直っただろう。
Endfieldくんは変わらず落ちた。
Windows君、釈放。
メモリを疑う
0xc0000005と検索すると、とにかくメモリの話が出てくる。
そこでWindowsに標準搭載されている「Windowsメモリ診断」を実行。異常なし。
それでも信用できないので、今度は「MemTest86」というメモリをより詳しく検査するための定番ツールまで回した。こちらも明確な問題は確認できなかった。
もちろん、テストで異常が出なかったからといって、森羅万象のメモリ不具合が存在しないと証明されたわけではない。ただ、他のゲームは何時間遊んでも平然としていて、メモリテストにも何も出ない。それなのにEndfieldだけを狙い撃つ404小隊のG11みたいなメモリ故障というのも、段々と説得力がなくなってくる。
少なくともこの時点では、メモリを主犯として逮捕するには証拠不十分だった。
どうせならやる気のないG11のままでいてほしかった。ドルフロ2ではやる気出してるのかな。
CPUを疑う
ここで問題になるのが、俺のCPUがi9-14900KFだということである。
13世代・14世代Intel CPUの不具合について知っている人なら、この型番を見た時点で少し嫌な顔をすると思う。俺もした。
知らない人向けに簡単に説明すると、一部のIntel製CPUで不安定化やクラッシュにつながる問題が大きく話題になっていた時期があった。そして俺の14900KFは、まさにその世代である。
ただ、事前に伝えておくが俺は問題が表沙汰になった際にBIOSを対応版に変更し、CPU自体も交換している。
負荷テスト、つまりCPUに意図的に重い仕事をさせて異常が出ないか調べる検査を行い、CPU側の設定もいくつか変更した。しかし明確なエラーは確認できず、設定を変えてもEndfieldのクラッシュは改善しなかった。
この辺から、容疑者を署へ連れていって事情聴取をしては「アリバイがあります」と帰される作業になっている。
メモリ、釈放。
CPU、釈放。
次だ。
軽く流してはいるが、この時点でも結構な時間が経っている。
GPUを疑う
GPUはRTX 4090。
GPUドライバ、つまりWindowsとグラフィックボードの間を取り持っているソフトウェアも変更した。
さらにVRAMもテストした。VRAMというのは、ざっくり言えばGPU専用のメモリである。普通のメモリがPC全体で使う作業机なら、VRAMはグラフィック処理専用の作業机みたいなものだ。
異常なし。
もちろんEndfieldは落ちる。
RTX 4090を積んだPCでゲームが落ちると、「4090なのに」という妙な感情が生まれる。高い冷蔵庫を買ったのに卵だけ毎朝腐る、みたいな納得のいかなさである。冷蔵庫そのものはちゃんと冷えている。牛乳も野菜も無事なのに、なぜか卵だけが死ぬ。
今回のEndfieldはずっとそれだった。
他のゲームは動いている。CPUテストも通る。VRAMテストも通る。Windowsも直した。メモリもテストした。ゲームも入れ直した。
ここまでやってまだ落ちるので、段々と「本当に俺のPCが悪いのか?」という最初の疑問に戻ってくる。もしかしてもうすでにスタンド攻撃を受けているのでは?
公式Discordに行く
自分だけで考えていても同じ場所を回り始めたので、Endfieldの公式Discordでも相談した。
公式Discordでは英語の対応で、こちらは翻訳を使ったつたない文章でのやり取りとなったが、有益な情報を沢山もらえた。
Windows側のログやCPU設定についていくつか指摘を受け、改めてBIOS周りまで確認することになった。
俺は手動でオーバークロック、つまりCPUを標準以上の速度で無理やり動かすような設定をしていたわけではない。XMPというメモリを高速動作させるための設定も使っていなかった。
少なくとも自分からCPUの尻を叩いて「もっと走れ」と無茶をさせていたつもりはない。
しかしBIOSという場所には、ユーザーが触っていようがいまいが色々な設定が住んでいる。
正直、ここまで来る前はBIOSを本命だとは思っていなかった。
ゲームが一つ落ちる。
↓
Windowsを修復する。
↓
メモリを何時間も検査する。
↓
CPUを検査する。
↓
GPUを検査する。
↓
最終的にBIOSを更新する。
症状から解決策までの距離が遠すぎる。玄関の電球が切れたので家を建て直しているような気分だ。
BIOSを触る
まずBIOSの設定を変更した。すると、一時的に改善した。
PCトラブルを経験した人なら分かるだろう。これはPC不具合の最大の敵である。
「直ったかもしれない」
心の中のプロシュート兄貴は言う。「おい、どういうつもりだオメー。"直ったかもしれない?"そういう言葉は俺たちの世界にはねーんだぜ……。直したなら使ってもいい!」
そうだよな、兄貴。俺は言葉じゃなくて心で"理解"できた。
そして俺は、検証よりも先にBIOSそのものをアップデートした。
そして落ちなくなった
BIOSアップデート後、Endfieldをプレイした。
落ちない。
しばらく遊ぶ。
落ちない。
それまでなら既に一度や二度はデスクトップへ強制送還されていてもおかしくない時間まで遊んでも、落ちない。
少なくとも、UnityPlayer.dllの0xc0000005を吐いて突然終了する、これまで散々見てきた症状は発生しなくなった。
こうなると当然、
「犯人はBIOSだったッ!」
と言いたくなる。
一週間かけて容疑者を片っ端から調べ、最後に会った人間の家から凶器が出てきたようなものだから、逮捕状の一枚くらい書きたくなる。
しかし、書けない。
俺が確認できたのはあくまで、「BIOSをアップデートして以降、Endfieldが落ちなくなった」という事実だけだからである。
BIOSそのものが直接の原因だったのか、BIOS更新によってCPU周辺の何かが正常化したのか、それまでに行ったWindows修復や設定変更も含めて複数の要素が関係していたのか、俺には分からない。
こういう時に一番困るのが、比較対象となる別世界(D4C)が存在しないことである。
BIOSを更新した俺と、BIOSを更新しなかった俺を二人用意し、同じ部屋でEndfieldを10時間ずつ遊ばせればかなり良い検証になるだろう。
残念ながら俺は一人しかいない。
なので結論は、
俺の環境ではBIOSアップデート後にEndfieldのクラッシュが発生しなくなった。ただし、BIOSが直接的な原因だったのかは断定できない。
これになる。
結局、一週間で何が分かったのか
PCの不具合について検索すると、山ほど解決策が出てくる。
メモリを疑え。ドライバを入れ直せ。Windowsを修復しろ。ゲームを再インストールしろ。BIOSを更新しろ。
そして恐ろしいことに、そのどれも大体間違っていない。疑わしきは罰せという、村人陣営の数が多い人狼ゲームみたいな思考が求められる。
ただし、「正しい対処法である」と「お前のPCの原因である」はまったく別の話である。
今回俺が一週間かけてやったことは、結局それを一つずつ確認する作業だった。
Endfieldから始まり、Windows、メモリ、CPU、GPUと順番に取調室へ連行したが、どいつもこいつも証拠不十分で帰っていった。最終的にBIOSまで事情聴取を始めたあたりで、ようやく症状が止まった。
だから同じように何かのゲーム、ソフトだけが落ちている人へ、最初から「BIOSを更新しろ」とは言わない。
ただ、それを再インストールして、ドライバを変えて、Windowsを修復して、それでもUnityPlayer.dllの0xc0000005が出続けているなら、そのソフトよりもっと下、そもそもの部分まで疑う価値はあると思う。
ゲームが落ちてるんだからゲームが悪いだろ、という俺の極めて常識的な推理は、BIOSという最初からいたよく分からない奴に殴り殺された。
俺はEndfieldを遊びたかっただけである。苦労に苦労を重ねて、ようやくEndfieldが普通に起動するPCが一台出来上がった。
最初から持ってた。
以上を持って、俺とEndfieldの一週間に渡る戦いを終了とする。

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